奥田英朗 著
小さな町で起きた学校内での中学生の転落死。
事故か事件かわからないまま物語は進んでいきます。
捜査を進める刑事、検事、被害者の担任、被害者の家族、加害者だと疑われる生徒、その家族…と様々な人の視点で事件が描かれていきます。
同じひとつの事件なのに当事者の立場が違えばこんなに見え方が違うんだって思います。
特に被害者の母親と加害者の母親の共通の気持ち
「とにかく自分の子供が大事で自分の子供さえ幸せでいてくれたらいい」
という感情は普段は見せない本当のところの本音なんだろう。
被害者と加害者と立場は真逆だけど母親が子供を想う気持ちは同じだなと思いました。
子供を想う気持ちは同じはずなのに被害者、加害者だから対立しなきゃいけないのが悲しかったです。
子供を想う母親の気持ちはすごい。
後半で、加害者とされた生徒からの視点が入ってくるんだけど、これが1番興味深かったです。
もう忘れかけてる中学生の気持ち。
読んでいて思い出してきました。
中学生特有の友達関係の難しさや複雑さ。
みんなと同じでいなきゃいけないという大変さ。
そこから外れた者はみんなで排除しよう、という怖さ。
転落死してしまった男子生徒は、日頃から空気が読めないとか言われてみんなからイジメを受けていた存在でした。
私が最後まで読んで思ったのは、先生も含めたみんなが男子生徒を追い込んでこの転落死は起きたんだなということ。
いろんな角度から事件が明らかになっていくから読んでいて飽きないし引き込まれていきました。
一気に読めます。