33歳で乳がんになっちゃった私の平凡な日常

乳がん患者家族から乳がん患者になってしまった33歳の私の平凡な日常をつづった日記です。

読書メモ。紙の月


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角田光代 著

 

 

銀行でフルタイムパートとして働く41歳の主人公が、1億円を横領してしまいます。

そこに至るまでの経緯とその後の逃亡が書かれています。

 

主人公の学生時代の友達、専業主婦をしていた時に料理教室で出会った友達、元カレの視点からも主人公のことを回想しています。

 

主人公の梨花は学生時代から、お嬢様気質で人を疑うようなこと知らないようないわゆる良い人です。

美人だし、それを鼻にかけることもなく優しくて友達も多い。

みんなが友達になりたいと思うような人。

 

そして結婚して何不自由ない結婚生活が始まります。

しかし梨花がパートとして働きに出て自ら給料を得るようになってから徐々に夫に対する違和感を感じていきます。

 

その違和感はお金に関することで、夫はプライドが高く自分が家計の中心であり、妻の稼ぎなんてなんの足しにもならないものなんだというようなことを気付かないくらいサラッとさりげなく梨花に伝えてきます。

私は読んでいてものすごく嫌な夫と感じました・・・。

 

そんな時に大学生の光太と出会います。

そして恋に落ち不倫関係となります。

 

この出会いが梨花を巨額な横領に導いていきます。

 

光太も別に図々しい奴でもないしいわゆる風痛の良い人です。

 

けど、だんだん梨花がお金を渡していき豪勢な食事などをさせて彼の金銭感覚もマヒしていきます。

 

数千円の安居酒屋を奢ってもらっただけで何回もお礼を言っていた光太が徐々に変わっていってしまう様が悲しいです。

 

でも人間って良くも悪くても慣れていってしまいますよね。

 

私の見解ですが、梨花は良い人すぎて相手に違和感を感じても伝えることができない人。

ぐっと飲み込んでしまう。

その小さな違和感が積み重なりどんどん歯止めがきかなくなっていったのかなと思います。

 

 

でも本当にお金って怖いです。

お金で相手を縛り付けたり、支配したり・・・そうなると絶対にその関係は破綻してしまいますよね。

 

始めは何気ない出来事が横領につながってしまう。

よくテレビとかで見る横領事件とかも最初はささいな出来心だったなかなとか思いました。

 

ニュースを見ている方は犯罪を犯した人のことを悪人だなって思うけど、紐をといてみればみんな元から悪人ではなかったのかもしれない。

 

角田光代さんの「三面記事小説」という作品があるんですがそれを読んでも同じことを思います。

これもおもしろいです。

 

犯罪者だって生まれた時から犯罪者ではないはず。

 

自分では、普通に生きているように思っていても何かのボタンの掛け違い、ささいな出来事で誰でも犯罪者になる可能性を秘めているんではないかと読んでいて思ってしまいました。

 

私は絶対そんなことしないって言いきれないような人間のリアルさが書かれています。

 

 梨花の夫は妻の異変に気付いていなかったのか、梨花のことをどう思っていたのか・・・

個人的には梨花の夫目線の話も読んでみたいです。